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LCCとFSC(フルサービスキャリア)のフクザツな関係

スクートとタイガーエアが合併

 

2016年の5月にスクートとタイガーエアが、予約システム、フライトスケジュールと乗り継ぎ、手荷物条件、チェックインカウンターとコールセンターの統合を開始し、25か月目の今月に統合が完了しました。二つのキャリアは一つのブランド(筆者注:スクート)の下で合併することになります。

(中略)

スクートとタイガーエアはアジア太平洋地域17か国にわたり60の就航地のネットワークを提供することになり、またどちらのエアラインも世界初の国際ローコストキャリアアライアンスであるValue Aliianceの一員です。

 

[AviTrader July 26, 2017]

 

スクートやタイガーエアは日本では聞きなじみがあまりない航空会社かもしれません。スクート、タイガーエアはどちらもシンガポールを拠点とする格安航空会社(LCC)です。

 

スクートは2011年にシンガポール航空の出資により中・長距離国際線を運航する格安航空会社として設立されました。A320だけでなくLCCには珍しく787も運行する等、東京・大阪・札幌をはじめとして20以上の都市に運航しています。

 

機内Wi-Fiやシート電源サービスも装備し、2015年には、アジア太平洋地域ベストLCCにも選ばれました。

 

「レジャー目的のお客様に人気で、フルサービスキャリア(FSC)同様の機内サービスを提供しています。」

(シンガポール航空ウェブサイト)

 

 

また、同社と合併するタイガーエアは2003年、独立系エアラインとして設立されました。2014年には親会社のタイガーエアウェイズホールディングスがシンガポール航空グループの子会社となっています。機材はA320を中心とし、短距離路線を運航していました。

 

Value Alliance

 

この合併する二社は、世界初の多国間LCCアライアンスであるValue Allianceの一員です。Value Allianceは2016年5月に、アジア太平洋地域の大手LCC8社によって設立されました。

 

「加盟航空会社は、アジア太平洋地域の160以上の就航地へ路線ネットワークを提供し、世界の3分の1のエリアをカバーします。2015年には17箇所の拠点から4600万人以上のお客様に利用されています。」

(バニラエアホームページより)

 

 

バリューアライアンスを構成する航空会社は以下の8社です。

 

 

航空会社

本拠地

セブパシフィック航空

フィリピン

チェジュ航空

韓国

ノックエア

タイ

ノックスクート

タイ

スクート

シンガポール

タイガーエア・シンガポール

シンガポール

タイガーエア・オーストラリア

オーストラリア

バニラエア

日本

 

従来、異なる航空会社を乗り継ぐ場合は会社毎のウェブサイトにてフライトを検索し、ご予約、決済が必要でしたが、

バリューアライアンスのお客様は、いずれかの加盟航空会社のウェブサイトを経由して専用のウェブサイトにて出発地、最終目的地を指定するだけで、バリューアライアンスの充実した路線ネットワークの中から乗り継ぎルート、ご利用便、最適な運賃を選択し、ワンストップで予約、決済いただけるようになります。

乗り継ぎ予約において、直行便予約と変わらぬ快適な操作性を実現します。

(バニラエアウェブサイトより)

 

 

LCCで不安視されるのは「遅れること」です。以前であれば遅れのために乗り継ぎが出来なければ、有償での自己手配が必要でしたが、このワンストップ予約を利用すれば無償での振替手配が可能になります。FSCと比較して、不便であった乗り継ぎ予約が出来ることになれば、利便性はかなり向上しそうです。

 

その一方、日本のバニラエアを見てみると現在予約システムを相互接続している航空会社はスクートのみであり、まだアライアンス内の全ての航空会社に乗り継ぎ予約を出来るようになっているわけではないようです。

 

東南アジアにおけるLCC戦争

 

東南アジアでは、Value Allianceのほかにエアアジアグループジェットスターグループがとても大きな存在です。どちらも複数の国で航空会社を運営し、グループ内での乗り継ぎも可能となっています。

 

エアアジアグループ

エアアジア (マレーシア)
エアアジア・インドネシア (インドネシア)
タイ・エアアジア (タイ)
フィリピン・エアアジア (フィリピン)
エアアジア・ジャパン (日本)
エアアジアX (マレーシア)
タイ・エアアジア (タイ)
インドネシア・エアアジアX  (インドネシア)

 

 

ジェットスターグループ

ジェットスター航空 (オーストラリア)
ジェットスター・アジア航空 (シンガポール)
ジェットスター・パシフィック航空 (ベトナム)
ジェットスター・ジャパン (日本)

 

エアアジアグループはアジア太平洋地域の24か国120都市以上に就航し、Skytrax社による「ワールド・エアライン・アワード」において9年連続で「ワールド・ベスト・ローコスト・エアライン」を受賞しています。

 

ジェットスターグループは大手FSCのカンタス航空を親会社とし、アジア太平洋地域の18の国・地域80都市以上に就航しています。

 

 

ここでValue Alliance加盟航空会社に再び目を向けると、多くが大手FSCの子会社である(あるいは出資を受けている)ことに気づきます。

 

 

バニラエア

ANAの完全子会社

スクート

シンガポール航空の完全子会社

タイガーエア・シンガポール

シンガポール航空の完全子会社

タイガーエア・オーストラリア 

ヴァージン・オーストラリアの完全子会社

ノックエア

タイ国際航空が株式の39.2%を保有

ノックスクート

ノックエアとスクートの

ジョイントベンチャー

(チェジュ航空:韓国の大手財閥「愛敬グループ」と済州特別自治道の共同出資)

(セブパシフィック航空:JGサミットホールディングスの子会社)

 

 

東南アジアでは大きな人口と高い経済成長率により今後航空市場は大幅に拡大すると予測されています。

 

先行のエアアジアグループ、そしてジェットスターグループの成長により、LCC市場の重要性をトップエアラインであるシンガポール航空等でさえも無視できなくなっていることが伺えます。LCCにただ食われないために大手FSCが傘下にLCCを入れ、エアアジア・ジェットスターグループに対抗するための手段としてValue Allianceが結成されたとみることが出来そうです。

 

実は多くのLCCが大手FSCの出資を受けて設立されたものであり、単にFSCの客を奪っていく敵ではないようです。その一方で、位置づけをきちんとしなければ中途半端な結果になる可能性もはらんでいるのではないでしょうか。

 

今後のValue Allianceの動向を注目していく必要があるでしょう。